アン子

 

 

 

『ペンは剣より強し』。
この格言を愚直なまでに信じる一人の少女がいた。
新宿、真神学園高校の三年、遠野杏子。
無論、新聞部に所属しており、彼女の名は学園中に知られていた。
それだけ、彼女の『言論』という名の武器の威力はすさまじいということだ。

 

しかし。
彼女に近しい友人は口を揃えてこう言う。
「そんな事ばかりやってたら、いつかキツイしっぺ返しがくる」
その言葉が自分の身を案じてくれてのものだというのは、杏子もいくらなんでも分かる。

 

だけど。
闇に隠れる悪を、光の当たる場所へ引き摺りだし、社会の審判を下す。
自分はそれを成し遂げるだけの行動力と勇気があるのだという自負と誇りが、杏子を突き動かしているのだった。
(私がやらなかったら、誰がやれるっていうの。大丈夫、私にはペンと真実を追求する勇気という何より強い武器があるんだから)

 

……そう。
最近、都内の公園で深夜に不良グループが出没し、通りがかった者に暴行を加え、金品を奪うという事件が頻発しているという情報を得て、その取材に出た時も、杏子はそんな使命感を抱いていたのだった。

 

張り込み二日目の夜。
あっけない程簡単にその瞬間は訪れた。
サラリーマン風の男性を、数人の若い男達が取り囲んでいる。
杏子は公園の植え込みの陰に身を潜め、チャンスを覗っていた。
一人の男が男性の襟首に手をかけて、殴りつけようと腕を振りかぶった時…
絶好のタイミングで、植え込みから飛び出してシャッターを切った。
フラッシュに唖然とする男達の姿が浮かび上がる。
「今よっ!逃げてっ!」
杏子が言葉を発すると同時に、男達の間から男性が必死の形相ですり抜けてる。
男性と共に杏子も公園の出口へ全速力で駆け出す。
(あいつらは驚いて出遅れてる。大丈夫、これなら私もあの人も逃げ切れ…)
だがしかし。
不意に闇の中で杏子は何かに足を取られた。
天地がひっくり返って、杏子の手からカメラが落ちる。
公園の出口へ、脱兎の如く逃げ去り、消えていく男性の背中。
代わりに、スキンヘッドのいかめしい男が杏子を見下ろしていた。

 

「見張るのは慣れていても、見張られるのには慣れてないってマヌケな話だよな」
禿頭の男は、にいっとしたり顔で笑う。
(ウソ…まさか、私、最初からこいつに気付かれて……)
呆然と倒れ込む杏子を、後ろから追い付いてきた男達が取り囲む。
「今日は金目の物奪えなかったけど。……まあいいや」
スキンヘッドは杏子の腕を掴んで、無理に引き立たせる。
「さっきの奴に人呼ばれてもつまんねえし。今日は特別にあんたをオレ達の根城に招待してやるよ。だから……」
言うなり、男はビリッと音を立てて杏子のブラジャーを制服ごと引き千切る。
「い、いやっ!」
ふるりと現われた胸の膨らみを隠そうとしても、がしりと手首を掴んだ男の手が許さない。
それを見て、男はにたりと笑って杏子の顔を覗き込んだ。
「長い夜になりそうだし、オレ達の遊び相手を務めてくれよ」

 

──廃ビルの地下。荒んだコンクリートの箱の中に杏子は連れ込まれていた。
「……うっ!イ、イクッ!おら!しっかり顔で受けろ!」
「うああっ!……う、ううっ、ひっく……」
にちゅにちゅと。
そう音を立てて自分の胸の間を上下していた肉棒の先端から、熱い体液が噴き出した。
既に汗と涙と別の男の体液でぐちゃぐちゃになっていた杏子の顔に、それが容赦なく降りかかった。
更にそこに、フラッシュが焚かれる。
「や、やめなさいよ……。こんな、こんなの、撮らないで……」
杏子はか細過ぎて抗議にならない抗議の声を上げる。
自分を取り囲む男達の一人が手にした、そのカメラ。
もちろん、それは杏子の使っていた愛機だった。
「なに言ってやがる」
杏子の剥きだしになった背中の上から、冷たくからかう声が落ちてきた。
リーダー格らしい禿頭の男が、杏子の肉の中に自分の男根を深く突き入れていた。
「どうせあんた、アレで他の連中の見られたくない所、撮ってたんだろ?因果応報って言葉知ってっか?」
「うう……」
男の言葉は図星だった。杏子には反論できる言葉がない。
杏子はさめざめと泣いた。
「ちっ、うるせえな。おい、誰でもいいからこいつの口、塞いでやれよ」
リーダーのスキンヘッドの言葉に、おもむろに一人の男が杏子の前に近付いてきた。
「いやっ、いやっ……っ!うっ!ふぐっ!」
首を振って逃れようとする努力も空しく、杏子は頭を押さえ込まれ、酷い異臭と汗の塊のような味のするそれを、口内にねじ込まれた。

 

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(……なんで、なんでこうなってしまったんだろう)
膣内と口。同時に二人の牡の欲望を受け入れながら、杏子は必死に考えた。
(キツイ、しっぺ返し。……うん、本当だわ)
喉の奥まで肉棒の先端が侵入してくる。
それを舌で押し返そうとして、皮肉にも丁寧に舐め回すような形になる。
「はっ、はっ……。あんまり早く、音を上げてくれるなよ?」
後ろから膣内を行き来するピストン運動が、徐々に速度を増してくる。

杏子は『言論』という形のない『武器』を持っていた。
武器を持つということは、戦いに身を置く事。
戦いには常に勝ち負けがあり、敗北者にはそれに見合った運命が待っている。
そんな……
そんな当たり前の事を、過剰な自信とペンという『武器』に対する信頼から、見えなくなっていた。
それが杏子の致命的な欠点であり、幼過ぎた部分だった。
……友人達の言葉は、その事を指摘していたのだ。

「……っ!そろそろ、あんたの膣内にオレの濃いの、出させてもらうぜ?」
「んっ!んっ!んくっ!んんっ!んん~~っ!!」
男はそう宣告すると、更に突き込みのペースを速める。
口の中の手下のそれも、杏子の舌の動きに合わせてひくひくと脈打つ。
そして──
「うっ!」
同時に、自分を前後に挟んでいた男達が呻く。
膣内の、そして口内の男根が弾ける。
どくんどくんと、大量の牡の体液が杏子の喉へ、そして体の奥へと大量に注ぎ込まれていく。
(こんな、こんな酷い目に遭う位なら、私、私……もう……)
そのおぞましい感触に気が遠くなりながら──
──杏子はあれだけ堅く信じていた自分の信念が崩れ去る音を聞いていた。

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