レベッカ


 「突然お呼び立てして申し訳ありません、レベッカさん。実は、前から薄々感じてはいたのですが、どうも貴女をこれ以上前線での戦いに起用するには無理があるようです。
端的に言えば、戦力として計算できない、ということです。
よって、今後は貴女は前線から離れ、今回新しく編成される一般兵の支援部隊に加わってもらうことになります。…ああ、用件というのは以上なので、下がって構いませんよ」

「え、あの……」
その部屋に入った途端、一息にまくし立てられて、レベッカは唖然となった。
彼女の目の前には、この軍の参謀を務める女軍師が、レベッカの方を見ないまま机の上の書類に目を通していた。
「そ、その…。わたし、急にそんな事を言われても…」
「ああ、いたんですか?まだ何か?」
女軍師が顔を上げてレベッカを見る。感情の見えない、冷たい目。
「……いえ、分かりました。すぐに、支度、します」
元々、レベッカに軍師の意向を左右するだけの権限などない。
無表情な女軍師の迫力にも押されて、レベッカは唯々諾々と承知した。
「そうして頂けると助かります」
頷いて、女軍師は再び書類の山に向き直る。

そのまま軍師の部屋を出ようとすると、
「レベッカ。勘違いしないでください。貴女が必要ないと言った訳じゃありません。私の描く戦にはこういう役割も必要で、適性を考えて貴女にお願いしたのです。この異動は貴女自身の為を思ってのものでもありますから。…貴女は私の戦に必要な人です」
レベッカが振り返ると、薄く微笑を浮かべた女軍師が自分を見ていた。

──そんな事があってから、七日目の夜。
レベッカは一般兵の野営地の近くにあった泉で一人、水浴びをしていた。
新しい部隊での生活は思ったよりもずっと充実していた。

役立たず、と有り体に言えばそう宣告された事はショックだったが、新しい部隊は似たような処遇の女兵士ばかり集まっているようだった。
みな、レベッカと似たような年頃で気の合う、素直で気の優しい少女ばかりだった。
部隊では多かれ少なかれ足を引っ張ってきたらしいが、やはりこの編成には満足しているようだった。
それだけで、レベッカの気も休まった。
(なあんだ、わたしだけじゃなかったんだ)
支援といっても普段の食事の炊き出しや、武器防具の修理など細々とした雑用ばかりだったし、若い女性兵士ということで、男性の一般兵もなにかとちやほやしてくれる。
(前線じゃあ、こんな風にのんびり水浴びもできないし。…逆に気が引けるくらいだよ)
前線の厳しさを知っているだけに、この支援部隊の女性はどことなく申し訳なさそうな顔付きをしている者が多い。…悩みといえば、その程度。
(まあでも、それだって贅沢な悩みだよね。せっかく役目をもらったんだから働かないと)
レベッカの事を考えたという女軍師の言葉は、やはり正しかったのかもしれない。
だが……。

──「レベッカちゃん」
「きゃっ!?」
体を洗い終えて泉から上がろうとすると、背後から声を掛けられた。
前を隠して振り返ると、そこには顔見知りの一般兵の姿。
その顔にはこれまで見たことないようなにやにや笑いが浮かんでいて、レベッカはぞっとした。
「ちょ、ちょっと待って!今、服を着るから、だから用事があるなら待ってて!」
「その必要はないよ」
レベッカは裸体を水面に沈めて隠そうとするが、そんな事には構わず一般兵はその腕を掴んでレベッカを無理矢理、泉から引き上げて野営地の方へと引っ張っていく。

一般兵の野営地には──
背筋の凍るような光景が待っていた。
「み、みんな…」
同じ支援部隊の女性兵士達が、これまで面倒を見ていた一般兵の男達に獣のように襲われている。
ある者は茂みに引き摺りこまれ、後ろから獣のような体勢で犯されている。
別の者は複数の男に囲まれ、手や口にペニスを押し付けられ、奉仕を強要されている。
またある者は男の上にまたがって、下から激しく突き上げられている。

「ど、どうして…。こんな…」
「さあ、レベッカちゃんだけ仲間外れにしたらかわいそうだよね」
「!い、いやっ!!」
着る物もないままレベッカは逃げようとしたが、一般兵はぐっとレベッカの腰を捕まえて固定し、そのまま自分の下着を下ろすと──
「ふぁああああん!」
後ろから、一息にレベッカをいきり立っていた肉棒で貫いた。
その衝撃に堪え切れず、レベッカは目の前に立っていた木の幹にすがり付く。

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「うぁ、ああ、あああ……。酷い、酷いよ。どうしてこんな急に…」
後ろから一般兵に突かれながら、レベッカは涙を流してその真意を問うた。
「何故って?そりゃあ、上から許可が下りたからに決まってるだろ?」
一般兵は、息を荒く弾ませながら、答える。
「あれ?もしかして知らなかった?つい先日、俺達一般兵の欲求不満を解消する為に女性だけの慰安部隊が作られることになったって、告示があったんだよ」
「えっ?」
──慰安部隊。
(それって、もしかしてわたし達のこと?)
「…まあ、それでも好き勝手やっていいわけじゃないんだけどね。不満が溜まらないように定期的に上から許可が下りて、その時だけ俺達のお相手してくれりゃいいってわけ」
「そんな…。それじゃあ、それじゃあ…」
──自分は、あの女軍師に騙されて…。

「まあいいじゃん。普段は決して悪いようには扱わないから、さっ!」
一般兵はレベッカの豊かな乳房を鷲掴みにすると、その感触を楽しみながらぐいっとレベッカの上半身を後ろから持ち上げた。
「うはっ、おっぱい柔らかいねえ。俺、実は許可が下りたら絶対、レベッカちゃんモノにしようと思ってたんだよねえ」
「うう、うう……そんなのって……」
「それに、さ……」
一般兵は、体位を変えて更に突き込みを早くする。
レベッカの耳元に、獣のような熱い息が掛かった。

「俺達ってさ、結局、上から見れば使い捨てのザコなんだよね。それなりに名の知れた奴ならいざ知らず、俺達みたいなのがいくら敵にやられても上はなんとも思っちゃいないわけ。一人減っても痛くもかゆくもないし、倒れてたって見向きもしない」
「そ、そんなの……わたし、知らないよ」
「レベッカちゃんだって、知ってるでしょ?前線のキツさ。お偉方は周りの奴が守ってくれるけど、俺達なんて、ただの盾。矢を防いでくれたらもうけもの、そんな扱い。……そりゃ不満もたまるって。だから…」

一般兵は言うなり、これまで溜まったうっぷんを晴らすかのように激しく律動を始めた。
「この位の娯楽がなかったら、正直、どうにかなっちまうんだよっ!!」
「きゃあああっ!!」
ぱん!ぱん!ぱん!!
肉と肉とが激しくぶつかり合う音に、レベッカの悲鳴が重なる。
「はあっ、はあっ…!レベッカちゃんなら、分かってくれるよね……?」
自分勝手な理屈を並べながら、自分を犯す一般兵の言葉に応じる余裕は既にレベッカにはない。ただ、ひくひくと膣内で脈打つ男根に、心まで押しつぶされそうになっていた。
そして──
「うっ……っ!!」
「あああ、ああ、そんな膣内に……」
どくどくと、大量の精液がレベッカの肉の中に放たれる。その感触にレベッカはぞくりと背筋を震わせた。

ふと、レベッカの涙に濡れた視界に周りの様子が映った。
乱交の場へと発展した野営地は、収まるどころかますます狂乱の度合いを増していくようだった。だが──
多くの女性兵士達は、泣きながらでも、しかし激しく抵抗するそぶりはなかった。
みな、諦めたかのように男達の欲望に身を任せている。
──その様子に、レベッカは心当たりがあった。

「…ふう。さあて、レベッカちゃん、今度はこいつら相手してやってよ」
その言葉にレベッカは顔を上げる。
先ほどの一般兵に代わり、別の男達が自分を取り囲んでいた。
(これが…軍の中で任された、わたしの仕事)
その欲望に支配された顔付きの男達に、地面の上に押し倒される。

(みんな、みんな…。この人達も命をかけて戦っている。わたし達ばっかり楽しようなんてやっぱり虫の良い話だったんだ)
一人の男がレベッカの上に馬乗りになり、その胸の間に己の肉棒を挟んだ。
更に、空いた膣内にも新しい男根が潜り込む。レベッカは、諦めたような息を吐いた。
体の力を抜いて、ただ男達のされるがままに任せる。
(上の人も、ちゃんとわたし達に酷い負担の掛からないように配慮してくれてる。……これで不満を言うようなら、この軍にいる資格なんてないんだ)

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「レベッカちゃん……、俺の先っぽ、舐めてくれよ」
自分の胸を使って肉棒をしごいていた男が、低い声で告げた。
「……うん、いいよ。気持ちよくしてあげる」
レベッカは頷いて、自ら乳房を掴んで男の肉棒を挟み込み、そしてそこからはみ出た男の肉棒の先端を、ぺろぺろと舌を伸ばして舐め始めた。
──それからまた数日後、一般兵の野営地からは遠く離れた砦の中の一室。
「今回、新しく編成した『支援部隊』の現時点での報告ですが、目立って大きな混乱はないようです。一部、女性兵士から不満の声は聞かれたものの、全員、普段の待遇に関しては満足しているようですし、離脱を希望する者も、今のところ0です」
騎士が報告するその室内では、女軍師が一人、チェスボードを眺めていた。
「そうですか。…一般の兵の方はどうです?」
「ええ、貴女の言われた通り、軍内でのいざこざや戦場での問題行動が格段に減りました。士気も上がっているようですし、戦果も目に見えて増してきています」
「成る程。よく分かりました」

……そんなものだろう、と軍師は考えた。
一般兵の問題行動が増加し、解消する策をエリウッドという、彼女の主から求められた時、彼女は真っ先にこの『支援部隊』を提案した。
エリウッド自身は難色を示したが──
これだけ効果があって、まさか今更、彼もやめろとは言うまい。

「……しかし、いいのですか?」
「何が?」
騎士がおもむろに問いかけるので、彼女は無表情のまま首を傾げた。
「いえ、だから…。軍に所属する者とはいえ、女性にこのような仕事をさせるのは、同じ女性の貴女としては、胸が痛まないのか、と…」
「随分とはっきりおっしゃいますね」
「い、いえ…その…」
無表情に言う軍師に、騎士は大いにおののいた表情を浮かべた。

「大丈夫です。それは私が考えるべき事ではありませんし、彼女達も大きく不満を表さないということは、自らの仕事を受け入れたということでしょう」
その為に、最適な人材を選んだのだ。
前線の厳しさを知っており、素直で気立ての良い、責任感の強い女性兵士。
レベッカなどは、その典型だ。

「それでも不満が高まれば、私自らが彼女達の所に出向いて多少、泥を被る位の覚悟はしています。貴方の心配することではありません」
「はあ、しかし、その…」
「貴方も軍に属する者なら、情に流されず冷静な判断を心がけるべきです。でないと…」
チェス盤の上に視線を落とし、彼女はそこで、初めて心底愉快そうに──
──うっすらと笑みを浮かべた。
「私のような悪知恵の働く女狐のチェス盤に、気付かぬ内に乗せられてしまいますよ?」

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